コンシェルジュノート

2015/01/15 コンサルタントコラム

旅館・ホテルの人材採用の動向
《コンシェルジュコラム》旅館・ホテルの人材採用 (1) (執筆: 遠藤 光輔)

■労働人口の争奪戦が始まる

年々、人材の採用が困難であるという声をよく聞くようになっている。大きな視点でいえば、日本の総人口の減少は当然のことながら、15~64歳の生産年齢人口も大きく減少すると見込まれている。2013年10月の推計では生産年齢人口は7,901万人であり、32年ぶりに8,000万人を割り込んだ。今後の予測では、2060年には4,418万人まで大幅に減少することが見込まれている。

全産業でみれば、パートを含めた有効求人倍率は、リーマンショク後の0.42倍を底に年々上昇しており、直近の平成26年11月では1.12倍となっている。つまり、総数で見れば現状は、仕事を探している人より求人の方が多いということになる。

特に、比較的小規模な事業所は苦戦をしいられている。従業員規模30名未満の新規求人数は、平成21年の335万人を底に右肩上がりで増え続けており、平成25年には618万人となっている。一方、雇用者数は1,621万人から1,541万人と大きく減少しており、求人が増えていても雇用数が増えていない。つまり、十分な採用ができていないことがわかる。

■旅館・ホテル(飲食業含む)の人材採用の特徴

旅館・ホテルなどのホスピタリティ企業においては、サービスを提供する上で、人材は必要不可欠であり重要な経営資源の一つであることは言うまでもない。ある調査によれば、人手不足を感じている経営者は27.1%、その中で38.5%が既に事業に影響が出ているとのことである。十分な人材確保が出来なければ、事業の継続自体もままならないという状況である。

宿泊業・飲食サービス業の特徴として、人材の入れ替わりが早いという点がある。直近の調査である平成25年において、入職率31.8%・離職率30.4%と他の産業に比べて著しく高い。これは単純計算で毎年3割は従業員が入れ替わっていることとなる。

また、参考値としてではあるが旅館・ホテルが含まれる接客・給仕の職業の有効求人倍率は、2.79倍となっており他産業に比べ高くなっている。これは旅館・ホテルの人材採用は、他産業に比べ難易度が高いということである。

当然のことながらこれらを念頭に置いた採用活動が必要不可欠である。

■旅館・ホテルの人材採用の実態

もちろん、人材活用に関しては、既存人員の教育育成が重要な要素の一つである。一方で新規人員の確保の観点から、採用をいかに行っていくかということも、今後は並行して戦略的に推進していく必要がある。

ある程度の規模があり、毎年一定数の新卒者の採用を行っているような会社においては、何らかしらの採用に対する改善のアクションがとられている。しかしながら多くの場合は、管理部の担当者が他の業務と兼務しながら採用活動を行っており十分な対応ができていない場合が多いのではないだろうか。具体的な対策が分からない、もしくは他の業務が主であり、採用業務が後回しになっている会社が多く見受けられる。

採用活動は主に職業安定所(ハローワーク)への登録や、従業員等の縁故採用のみにて限って行われており、「応募がなかなか集まらない」と悩みつつも受け身の採用活動になっている場合が多いのではないだろうか。

では、具体的に採用活動を行う上で何を行えばいいのだろうか。次回以降は、採用活動の原則とその具体的な手順について探っていきたい。