コンシェルジュノート

2014/05/13 コンサルタントコラム

再生の失敗事例「会社と債権者の信頼関係が低い」
《コンシェルジュコラム》ホテル旅館の再生を妨げるもの(2)

 その旅館の社長は常々こう言っていた。
「金融機関を如何にだましてお金を引っ張ってくるかが俺の腕の見せ所だよ」

 まだ売上が伸び、利益も十分に出ている時代は良かった。
 しかし、団体向けの施設という色が濃かったこの旅館では、バブルがはじけ、団体旅行
が終焉を迎える頃から、売上の減少が続くようになった。営業キャッシュフローはみるみ
るうちに減少、さらに平成8年に行った大規模な設備投資にかかる借入が大きく、重い利
息負担は常に経常損失を発生させた。簿価上の債務超過になって久しい状況であった。

 誰がこのような旅館に融資を続けるだろうか。いや、多くの金融機関はそれでも、この
ような状況にある旅館にリスケをしたり、新規融資をしたりして支援を続けている。それ
はひとえにその地域にとって必要な中小企業であるからである。

 しかし、この旅館は社長が金融機関を敵視していたため、粉飾を行っていた。売上の架
空計上と在庫の過少申告が主であり、社長自身が消費者金融に借入を起こしていた簿外債
務もあった。
 再生支援の過程で行われる財務デューデリジェンスにおいて、これらの事実が白日のもとにさ
らされることとなった。

 常日頃から社長の斜に構えた姿勢が鼻についていた金融機関は、この事実に怒り、かつ
よい口実が出来たということであっさりと支援を中断、債権を高値で買ってくれる民間の
札付きのサービサーに売却してしまったのだった。

◇ 次回予告 ——————————————————————-

第3回は「再生の失敗事例 親子の確執が根深い」をお届けします。
お楽しみに!