所有と経営、運営の分離は、再生と承継に効果あり①
もともと日本のホテルにおいては、所有直営方式と言われる所有と経営、運営が一体となった経営方式がとられてきた。
これは、おそらくは日本特有の宿泊施設、旅館の歴史の流れが重大な影響を与えてきたからだと思われる。昔ながらの旅館は、そのほとんどが家族経営であり、自分の住まいをお宿にして始まったと思われるので、自分が所有する旅館を家族が経営し運営を行うというのはごく自然なことだったと考えられる。
しかしながら、日本において初めての外資系ホテルであるヒルトンから、いわゆるマネジメントコントラクト(運営受託方式)の経営方式が、採用されることとなってきた。それから時を経て、日本でも様々なパターンの経営方式が採用されてきている。
ここで、ホテルの経営方式について少しまとめておきたい。おおざっぱには、次のような経営方式がある。
①所有直営方式
②リース方式
③運営受託方式
④フランチャイズ方式
⑤経営指導契約方式
①の所有直営方式は、これまでお話ししたとおり、ホテルを所有し経営と運営も自社で行う方式であり、現在の日本のホテル・旅館のほとんどがこの方式である。
②のリース方式は、所有と経営・運営を分離した方式です。ホテルを所有する(いわゆるオーナー)会社がホテルの所有権と保有にかかる経費などを負担する。経営・運営会社に賃貸するホテルのリース料を収入とし、大規模修繕やリノベーションなどの資本的支出やFF&E(ホテル内家具、備品類など)にかかる積立金などを負担する。そして、経営・運営会社はオーナー会社からホテルの土地や建物、設備・備品などを賃借して経営および運営を行う方式である。経営・運営会社がホテル売上や運営にかかる経費を負担するので、経営や運営にかかるリスクを負担することになります。その代わり経営・運営がうまくいけばそれなりのリターンが得られるという方式である。更に、経営と運営を分離し、経営会社が他の運営会社(オペレーター)に運営を委託する場合もある。この場合には、所有と経営、運営の3つが完全に分離することとなる。
つづく