コンシェルジュノート

2010/06/22 コンサルタントコラム

ホテル・旅館は消費者ニーズの多様化に応えなければならないのか④

 前回は、消費者ニーズの多様化というのは、情報量が多くなって各自の動機に従って多くのニーズが発生し、多様な行動がもたらされていることであることをお話しした。つまり、インプットが増えたのだからアウトプットも増えたと言うことである。

 現実的に消費者のニーズは多様化しており、それらに対応しないとホテル・旅館は集客は出来ないし、ご来館されたお客様の満足を得ることも出来ないのである。それでは、如何にして対応していくべきであろうか。

 そのヒントは、インプット(情報)に反応する各自の動機である。結果としてのニーズではなく、ニーズを引き起こす動機に着目するのである。消費者が持っている固有の動機に着目するのである。そしてこの動機は、理屈ではなく感性が重要な働きをする。「何かよく分からないけど良い感じ。」の「感じ」である。

 前回の例で言うと、決してお腹が空いていないのに焼いている焼きそばを見ているとどうしても買いたくなった時の、ジュウジュウと焼いている焼きそばを見て、「あの熱々の焼きそばを頬張ったら、ソースの焦げた良い匂いと少し太いソースの絡まった麺が口の中で一杯に広がって、幸せだろうなぁ。」という「感じ」があったからこそ、買いたいというニーズがわき起こり、買うという行動に移ったのである。決してお腹が空いていないのにも関わらず、である。

 この「感じ」を追求することが、多様化したニーズに応えるヒントである。そして、この「感じ」は一人一人異なるものであると捉えがちであるが、実はそれほど異なっていないし、たとえ異なっていてもある「感じ」に共感させることは可能なのである。

 例えば「本来の自分になりたいなぁ」と言う「感じ」は現在の消費者にとって結構当てはまる「感じ」である。だとすれば、ホテルにおける集客として例えば次のようには考えられないであろうか。

 

比較的忙しい30代後半のビジネスマンのファミリーがターゲットだとする。小学生3年生の娘がいる3人家族である。父親は日頃の忙しさから解放されてゆっくりと家族と過ごすことで本来の自分に戻りたい、母親は家事や子供の面倒から解放されて自分らしい自由な時間を持つことで本来の自分に戻りたい、娘はいつもと違う自然に囲まれて思いっきり遊びたい。「本来の自分になりたいなぁ」と言う「感じ」からこのようなニーズが生まれてくるとする。

父親と娘は目の前の美しい砂浜で貝殻や透明な石などを拾ってホテル内でアクセサリーづくり。母親はアロマテラピーとリフレクソロジーでリフレッシュした後、エステを堪能。それぞれが思い思いの時間を過ごして、夕食では地のものの旬の食材を堪能する。このようなイメージが湧くようなプランのストーリーを自社ホームページなどで告知をするのである。出来るだけ具体的に。

如何に、「本来の自分になりたいなぁ」と言う「感じ」に訴えかけるか。この「感じ」から生まれるニーズに対して、どのようなストーリーを組み立てるか。そして、このストーリーを如何に効果的に消費者にアピールするか。

このような視点でマーケティングを捉え治すと、消費者ニーズの多様化にも対応できるのである。