コンシェルジュノート

2010/05/25 コンサルタントコラム

ホテル・旅館は消費者ニーズの多様化に応えなければならないのか②

消費者ニーズが多様化しており、これまでのターゲットセグメンテーションやこれまでのマーケティング戦略の考え方では対応しきれないことも出てきているという話を前回した。

つまり、消費者ニーズが多様化しているから、モノやサービスが売れなくなってきたと言うことである。

しかし、本当に消費者ニーズが多様化したから、一つのモノやサービスの売れる量が少なくなってしまったのだろうか。

仮に、日本人1億人がすべて異なるニーズを持っていたとしよう。

単なる好き嫌いでも良い。そして、この異なるニーズに応えるために、ホテルとしてハードとソフトの組み合わせで対応しようとする。ハードとしては外装、エントランスロビー、フロント、客室など施設のバリエーションで対応するとする。

色や大きさ、材質などを組み合わせればあっという間に1万通りぐらいは造れるはずである。

一方、ソフトとしてはスタッフの接客方法、レストランでの料理やサービス、FF&E(家具・什器備品類)やアメニティなどのセッティング方法などのバリエーションで対応するとする。

ソフトはハードと違って無限通りの組み合わせが出来るであろうから、1万通りはすぐに出来るだろう。

そうすると、ハードに1万通りのバリエーション、ソフトに1万通りのバリエーションを持たせれば、1万×1万=1億となり、日本人すべてのニーズに応えられるはずである。

そうすれば、このホテルはすべての日本人のニーズに応えられるので、すべての日本人に顧客満足を提供できる。

しかし、これは明らかにおかしいことが分かる。

まずは、ホテル側としてみれば、ハードとソフトの組み合わせが1億通りにもなるホテルなんてあり得ない。こうなったら、何が入っているか分からない闇鍋のようなホテルになってしまうだろう。

一方、顧客側から見れば、自分で自分のニーズを明確に把握していることはあり得ない。主として小売の世界であるが、店頭で購買を決定する比率は780%にものぼると言われている。これは日用品だけでなく、比較的高価の商品も含まれるのである。つまり、消費者は自分のニーズなど分かっていないことが多いのである。

つまり、消費者ニーズの多様化そのものが曖昧な言葉であり、売れないことの言い訳を示しているに過ぎないのである。そもそも消費者ニーズの多様化は、現象であって結果なのである。この要因を探ることが、ホテル・旅館業の経営者にとっては重要なのである。

つづく