コンシェルジュノート

2010/05/10 コンサルタントコラム

ホテル・旅館は消費者ニーズの多様化に応えなければならないのか①

 消費者ニーズが多様化してモノやサービスの売れ方が変わってきたと言われて久しい。

 高度成長期時代までは、みんなが同じものを欲しがった。つまり、マスマーケティングが機能していた時代である。この時代の消費者は豊かになることを目指して、周りの消費と比べながら自分も消費することを目指していた。誰もが3種の神器を欲しがった時代であり、メーカーも大量生産で良かった時代である。

 やがて、高度成長期時代から安定期に入りバブルがはじけた頃から、消費者ニーズが非常に多様化してきた。モノの豊かさだけでは満足しなくなったこともあるし、モノへのあこがれが薄れ、逆にモノに憧れることの虚しさも知ってしまったことが要因である。更に、ITの進化と浸透がこの流れを助長するようになる。つまり、IT革命によりインターネットが社会的インフラとして消費者に無くてはならないものになり、インターネットによりそれまで得ていた情報量とは格段に異なる量をいとも簡単に得られるようになったことが大きい。誰でもがクリック一つで見知らぬ誰かの消費行動と結果について疑似体験できるようになったのである。そして、消費に対する選択眼が自然と肥えていったのである。

このような時代においては、ワントゥーワンマーケティングが必要とされたのである。しかしながら、もう既にワントゥーワンマーケティングでも捉えきれないほど消費者のニーズは多様化しているように見受けられる。ITを活用して消費者一人一人のニーズを捉えて、それらに応えるモノやサービスを提供していこうという試みが機能しなくなってきているのである。消費者一人においても時間や場所、気分などによってニーズがころころ変わり、自分でも気がついていないニーズがあり、いつの間にかモノやサービスを購入するようなことも日常茶飯事となってきている。

音楽においてCDはネットや携帯配信に取って代わられようとしており、昔あったミリオンセラーなど今は無い。ネットや携帯配信では、ソーシャルネットワークやブログ、最近ではツイッターなどによるクチコミによって売れる量が大きく変化し、ネット特有のロングテール現象も起きている。

先日の日経MJの記事によると、暮らし向きがこの1年間で良くなったと答えた消費者は10.0%に過ぎないが、この消費者は買い物の量を増やしているとともに安価な食品PBの購入量を増やした人の割合は60%を超えている。一方、暮らし向きが悪くなったと答えた消費者は40.2%にのぼり、買い物の量を減らすと同時に過半数の人が食品PBの購入量を増やしている。面白いのは、暮らし向きが良くなったと答えた消費者の方が割合として食品PBを多く購入しているのである。可処分所得が増えたのだから、高くて高品質の食品を購入するかと思えば、そうではなく安価なPB食品を多く購入しているのである。恐らく、高単価の食品も多く購入していると思われるが、食事にもメリハリをつけてこだわる時にはこだわるが、日常的には安価な食品でも抵抗がないと言うことであろう。

これまでのターゲットセグメンテーションやプロファイリングだけでは説明のつきにくい消費行動が増えているのである。

つづく