コンシェルジュノート

2017/12/14 コンサルタントコラム

事業承継に向けた取り組み:第5回 執筆:昌子 弘明

前回までのコラムでは、事業承継の現状、承継方法(選択肢)の多様化、同族経営の問題点や対策ついてお話しました。今回は、M&Aにフォーカスしてお話していきます。まず、M&Aをおさらいすると以下のようになります。

◇M&A(株式は他の事業者、経営も同事業者)
・事業承継の場合には所有も経営も第三者になることが一般的である
・後継者が社内にいない場合でも外部より広く後継者候補を探索できる
・現オーナー経営者が会社売却の利益を獲得できる場合がある
・従業員の雇用を維持できる(労働条件等は変更されることが多い)

事業や雇用を維持させるためにM&Aを選択することがあります。一般的に売却しやすい会社と売却しにくい会社があると言われています。視点は2つあり、業況と業種です。

<業況>
売却しやすい業況
・借入金が少ないなど財務状況が良好である
・優良な顧客基盤が存在する
・独自の技術やノウハウを持っている

売却しにくい業況
・業績が悪化傾向である(債務超過に陥っている)
・社長個人に依存した事業構造であり真似ができない
・特徴的な強みがない

<業種>
売却しやすい業種
・人材確保のための人材派遣業やIT業
・立地(拠点)確保のためのチェーンストア事業
・許認可取得のための介護事業

売却しにくい業種
・建設業
・卸売業
・宗教法人など特殊性が高い業種

今回は、売りやすい会社と売りにくい会社を「業況」と「業種」で特徴をそれぞれ3つずつ挙げましたが、実際にはさまざまなケースが存在するため参考に留めていただければ幸いです。

最後に、M&Aを円滑に進めるためのポイントについてお話します。
(1)買収側も売却側も会社の現状(事業戦略や財務状況など)を整理しておくことで、
M&Aに必要な事前準備が可能になります。
(2)売買の条件を設定しておくことで、いざM&A候補が現れた場合に迅速な判断が
可能になります。
(3)経営者の目的意識と決断力が重要となります。M&Aは事業戦略の実現や雇用維持
など最終的な目的があります。さまざまな条件交渉をする過程でこの目的を忘れずに
経営判断をしていくことが求められます。また、最終的に難しい決断をする覚悟
が必要となります。

これまで5回にわたり事業承継に向けた取り組みについてご紹介させていただきました。さまざまな事業承継の方法があり、またその対応も異なります。事業承継のための準備はある程度の準備期間が必要と言われています
(3年~10年程度の事業承継計画を作成することが多いです)。

以前は、事業承継やM&Aと聞くと、「遠い将来の話」「他人事」と捉えがちではありましたが、
最近は、「同業者も悩んでいる」「自社も考えとかないといけない」という声を聞くことが多くなりました。

私自身、選択肢が増えることは望ましいことだと思っています。また、円滑な事業承継に少しでもお役に立てるように、これからも邁進する所存です。

最後まで「事業承継に向けた取り組み」をご覧いただきありがとうございました。