コンシェルジュノート

2017/11/14 コンサルタントコラム

事業承継に向けた取り組み:第4回 執筆:昌子 弘明

前回までのコラムでは、事業承継の現状、承継方法(選択肢)の多様化、同族経営やM&Aの特徴などについてお話しました。今回は、同族経営にフォーカスして問題や対策についてお話していきます。まず、同族経営をおさらいすると以下のようになります。

◇同族経営の特徴
・株式(所有権)は親族が買い取る
・経営(経営権)も親族が引き継ぐ
・日本では最もなじみのある事業承継の方法
・後継者が存在し、やる気と能力があれば社内および社外の理解を得やすい
・早い段階で後継者候補を決めておくことで経営者教育や株式の生前贈与などの
 対策を図れる
・法定相続人が複数いる場合には経営権の集中に困難性が伴うことがある

事業承継とは、事業が継続することとお話しましたが、事業継続させるために同族経営独特の問題が発生することがあります。主に発生する問題は以下のとおりです。

①相続人間の問題
相続人が複数存在している場合に遺産分割がまとまらない財産の状況である
(株式が分散している、事業用資産以外の資産(財産)がない。など)

②後継者の問題
後継者候補(経営者意識が低い、事業を引き継げる能力がない。など)

③保証の問題
借入金がある場合の連帯保証を後継者が引き受けられない状況である
(返済する資金がない、保証を受けられない、担保がない。など)

④資金の問題など
企業価値が高い場合:後継者に株式を買い取る資金がない
企業価値が低い場合:事業自体の魅力がなく後継者がいない

実際には、同族経営で事業承継する場合に問題となることは、企業の置かれた状況によりさまざまです。いずれの問題も短期間に解消できるものではありません。そのため、しっかりとした、事業承継計画をつくる必要があります。

なお、事業承継を円滑に進めるためのポイントは、①社長個人の資産(負債)を把握する、②会社の事業実態や企業価値を把握する、③法定相続人に配慮した解決策を検討する、④事業承継計画の作成と税金対策を検討する、⑤後継者を育成する、⑥生前贈与など後継者の資金対策をする、といったところでしょうか。

次回は、M&Aについてお話します。