コンシェルジュノート

2014/10/15 コンサルタントコラム

WEB動向の変化が、ホテル・旅館にもたらすものとは?
《コンシェルジュコラム》旅館・ホテルのWeb戦略(1)

いまや、自社のホームページを持っていない、インターネットの予約サイトのサービスをまったく利用していない、という旅館・ホテルは、限りなく皆無に近いものと思います。

ですが、旅館・ホテルを運営されるいろいろな企業様を拝見していて、やや残念に思うことがあります。
それは、多くの企業様がいまだに一昔前のインターネットのト<レンドから抜け出せず、消費者の心理や行動パターンの変化に対応できていない、と感じられる点です。

これから3回にわたり、「旅館・ホテルのWeb戦略」と題してコラムをお届けしますが、第1回目となる今回は、いまインターネットで起こっている大きな変化について、まず確認しておきたいと思います。

(1) スマホの普及で、消費行動パターンが変化する
(2) SEO(検索エンジン最適化)対策の変質が、コンテンツの重要性を加速させる
(3) インターネットをめぐる技術の進化が、旅館・ホテルに変革を迫る


(1) スマホの普及で、消費行動パターンが変化する


スマホの普及によって、PCをあまり使わない、場合によってはそもそも持っていないユーザー層の比率が、徐々にではありますが、増加しています。
PCを中心としたインターネット利用と、スマホを駆使する新しい世代(?)の違いをおおまかにまとめると、このような傾向ではないでしょうか。

【PC中心】

  • 自宅や会社でPCの前に座って使う
  • 明確な目的(旅行であれば、宿泊プランの価格比較や観光地の情報収集、交通手段の確認など)を持っている
  • 文字情報を中心に閲覧する。長文でも最後までスクロールする
  • どちらかといえば、中~高年齢層

【スマホ中心】

  • 移動中などに、ときには何かをしながら、スマホやタブレットで情報を閲覧する
  • 明確な目的はあまりなく、時間つぶしの色合いが濃い
  • 特定のサイト(楽天、じゃらん など)やアプリを使って、目的の情報に直接アクセスする
  • 画像、動画など、直感的に理解できるコンテンツをよく見る。一方、長文は苦手
  • 30代半ば、またはそれ以下の世代が多い

この区分は固定的ではなく、同一人物でもシチュエーションによっては「PC中心」のスタイルとなったり、「スマホ中心」となったりと、混在する可能性があります。

実際、クライアント様とのお話しの中で、よく耳にするのが「リードタイム(予約してから実際に宿泊するまでの期間)が短くなってきている」ということです。
これまで3ヵ月程度だった施設は1ヵ月、数週間だった施設は1~2週間、場合によっては数日など。お客様の動きは、従来と明らかに変わっているようです。

これは、ユーザーの行動パターンが、上記「PC中心」から「スマホ中心」へ移行しつつあることも、一因として挙げられるでしょう。
スマホはPCに比べて画面が小さく、一度に閲覧できる情報が限られるため、詳しい条件を指定しての宿泊施設の比較などには不向きです。
一方で、移動しながら、状況に応じた情報収集には適しているため、事前に綿密なプランを立てて出発する必要はありません。目的地に向かう道すがら、そのときの気分に合わせ、臨機応変な宿泊先の選択ができる、というメリットがあるのです。

宿泊施設としては、自社がインターネットを通じて集客したいユーザーを、どちらのタイプに設定するかで、取るべきWeb戦略の方向性は大きく異なってくることになります。

Webリニューアルの際に、スマホ対応をどのように考えていくべきかについては、次回のコラムでもうすこし具体的に触れたいと思います。


(2) SEO(検索エンジン最適化)対策の変質が、コンテンツの重要性を加速させる


2013年9月、Googleから新しい検索結果の表示方法「Hummingbird(ハミングバード)」が発表されました。
これは、検索結果の表示の際、キーワードだけでなく、Webサイトの文章全体を読み解き、「ユーザーにとって価値あるコンテンツ」を表示することを目的としています。
また並行して、Webサイトの内容と無関係な外部リンクを集めることで検索順位を上げていたサイトの評価を下げるような変更も、継続的に行われています。

Googleが行っているこれらの対策により、ここ1~2年で、検索結果改善のために必要な対策は、大きく様変わりを遂げました。

では、「ユーザーにとって価値あるコンテンツ」とは、どういうものなのでしょうか。

それには、ユーザーがどういうときに検索サイトを使うのかを想像してみてください。
たとえば、「広島 観光」と検索したユーザーは、何を探しているでしょうか。

実際にGoogleで「広島 観光」と入力すると、PCの場合は、まず「広島県 > 名所」として、県内の主な観光名所の写真が表示され、その下の検索トップには「ひろしま観光ナビ」が表示されます。

「広島 観光」検索結果ページ

その下位には、主な旅行予約やクチコミサイトの「広島」関連のページがリストアップされています。

旅程や宿泊先が決まっていれば、施設名や交通機関の名前で検索するはずです。
おそらくは、これから広島への旅行を考えてはいるけれども、具体的な訪問先までは決めておらず、そもそもどんな見所があるのかを知りたい、という状況と想像できます。
上記の検索結果は、そうしたユーザーの隠れた要望をくみ取ろうとしていることがわかります。

では次に、「広島 お好み焼き」で検索するとどうでしょうか。

「広島 お好み焼き」検索結果ページ

今度は、広島のお好み焼き店のランキングや、おすすめのお好み焼き店をまとめたページなどが多く表示されたものと思います。
個別の店舗へのリンクが表示される方もあるかもしれませんが、その場合も、そのお店の評価やクチコミへのリンクと合わせて表示されているはずです。
これは、「お好み焼き」を検索するユーザーにとっては、店舗の情報そのものが重要なのではなく、それぞれの評価や、店ごとの違いなどが重要である(はず)、とGoogleが考えていることを示しています。

このように見てくると、検索エンジンの判断基準に対応していくのは、一般の企業サイトでは難しいのでは、と感じる方もいらっしゃることでしょう。
ですが、ユーザー目線で、しっかりとした運用を積み重ねてこられたサイトであれば、検索サイトは評価してくれます。正しい努力を、正当に評価することが、こうした検索エンジンの方針変更の目的だからです。

問題は、この「ユーザー目線で有用な情報は何か」という視点を、正しく理解できるかどうかにかかっています。

この点についても、次回で触れていく予定です。


(3) インターネットをめぐる技術の進化が、旅館・ホテルに変革を迫る


最後になりますが、インターネットをめぐる技術面での進化も、もちろん重要な要素です。

スマホの利用がここまで進んだ背景には、端末自体の魅力もさることながら、大容量データをストレスなく送信できる通信回線(LTEなど)の急激な高速化があります。
通信回線の高速化によって、音声や動画、CGなどのいわゆる「リッチ・コンテンツ」をスマホで手軽に楽しめるようになり、Webサイトで可能な表現に拡がりがもたらされました。

ただ、こうした技術の進化は、企業にとってメリットばかりではありません。
せっかく新規に作ったWebサイトも、数年後には(あるいはもっと早く)陳腐化してしまう可能性につながるからです。

技術やトレンドの変化を避けて通ることはできませんが、だからこそ、これからWebサイトのリニューアルを検討する企業様には、お願いしたいことがあります。

まずは、Webリニューアルを行う際は、その時点でできるだけ最新の技術に対応すること。
あるいは、対応可能な協力会社を見極めること。

次に、リニューアルの「目的」をしっかりと据え、技術面での仕様やデザイン、コンテンツのあり方に一貫性を持たせること。

最後に、経費ではなく、売上に先行する戦略的な「投資」として捉え、必要なリソースを確保すること。

こうした観点から、次回は、Webリニューアルを行うにあたっての進め方について、具体的に見ていくこととします。

◇ 次回予告 ——————————————————————-
次回は第2回 「Webリニューアルにおける手順と留意点」をお届けします。
お楽しみに!