コンシェルジュノート

2010/09/28 コンサルタントコラム

所有と経営、運営の分離は、再生と承継に効果あり⑥

元々あった所有直営方式の会社を所有会社とし、ホテル本体やその他付帯設備などホテル経営に必要な固定資産を残す。現経営者(オーナー経営者など)は、この所有会社のみの株を保有するとともに、ホテル経営に関しない固定資産(私有不動産など)は売却し、返済に充てる。また、これから先得られるであろう経営会社からの賃料による債権者への返済可能額を見積もり、それ以上の債務に関しては債権放棄をお願いする。もちろん、清算価値を上回る継続価値を実現できるといった経済合理性が大前提となるが、現経営者は所有会社のみのオーナーとなることによりホテル経営からは退くので、ある意味経営責任を明確にすることになる。但し、現オーナーが所有会社の資産を保有し続けることに対して、これが果たして十分な経営責任をとったことになるかどうかは議論の余地がある。

実際には、ある中小企業再生支援協議会の案件において、上記のスキームでは経営及び株主責任を十分に果たしたとは言えず、金融機関や協議会からの同意を得ることが出来なかったものもあるようである。そのため、このスキームを活用する際には利害関係者の十分な同意が必要である。これは、あくまでも資産は創業家が保有し続けることで、ある意味の風評被害を抑えることが出来る、そして次に述べるが、所有・経営・運営の分離スキームを活用することで債務者の最大利益が得られることが利害関係者の同意を得るポイントとなる。

一方、債権者やスポンサーの協力を得ながら経営・運営会社を設立し現経営者とは異なる経営者を立て、ホテルの経営と運営を任せることとなる。この経営・運営会社はホテル運営のプロが当たることとなるが、実際には地方や規模に於いてはこういった運営専門会社が受託できないケースも多々ある。その場合には、現ホテル幹部を中心とし、場合によってはホテルコンサルタント会社なども組み込んだ経営・運営会社を設立し、経営に当たることも考えられる。逆に規模や専門性を高めるためには、経営会社と運営会社を分けることも考えられる。どちらにしても、この場合経営・運営会社には過大な債務は残っておらず、所有会社に賃料を支払う、また大規模修繕やリノベーション費用を負担してもらいながら、ホテルの経営・運営に専念できると言うことになる。もちろん、所有会社と経営・運営会社間に緊張感ある規律が持ち込まれますので、それぞれがそれぞれの立場で努力し成果を出すことになるので、経済合理性の最大化が図られることになるのである。

 つづく