コンシェルジュノート

2018/10/09

xone HOSPITALITY REPORT(2018-3)

2.ホテル旅館の経営状況及び事業承継の現況
2-1.ホテル旅館は2極化が進んでいる
 株式会社帝国データバンクの調査「特別企画:ホテル・旅館経営業者の実態調査」(2018年4月20日)によると、平成28年度のホテル旅館の売上合計は、4.9兆円(前年比2.1%増)であった。これは、過去10年間で最高の売上であった。ただし、増収の比率は売上規模によって異なる。100億円以上は62.1%、50億円~100億円未満は49.1%、1億~10億未満は29.4%である。売上規模が大きければ大きいほど、増収傾向にある。100億未満の売上規模のホテル旅館は半分以上が減収になっていることも分かる。つまり、インバウンドをはじめとして機会をうまく取り込んでいるホテル旅館とそうでないホテル旅館の2極化が進んでいるのである。
ホテル旅館は過剰債務を抱えていることが多い。たとえ、インバウンドの需要をうまく取り込み収益の改善を図っている企業においても、過剰債務の解消までには至っていない企業が多いのではないだろうか。そう考えたときに、半分以上のホテル旅館は収益改善に至らず、かつ過剰債務が残っているものと推察される。

2-2.後継者不在のホテル旅館
 帝国データバンクの調査「特別企画:2017年後継者問題に関する企業の実態調査」(2017年11月28日)によると(表2)、後継者が不在の中小企業は実に66.5%となっており、およそ3分の2は後継者が不在ということになる。社長の年齢別に見ると下記のようになる。実際の事業承継を考えるのは60歳以上と考えると、34.2%~53.1%の企業において後継者が不在ということになる。

2:「社長年齢別の後継者不在率」(出所: 株式会社帝国データバンク「特別企画:2017年後継者問題に関する企業の実態調査」(20171128日)

これは、ホテル旅館業にとっても同じ傾向にあることは間違いない。しかも、ホテル旅館にとって難しいのは、先述したように過剰債務を抱えている中小企業が多いということである。たとえ後継者がいたとしても、過剰債務を抱えた中小企業を承継しようと思う後継者がどれほど存在するのか、はなはだ疑問である。このことから、ホテル旅館業は恐らく50%以上の中小企業に後継者がいないのではないかと考えられる。
 最近弊社にも、後継者が不在のため事業承継を外部スポンサーに委ねたい、そのためスポンサーを探索して欲しいという依頼が多くなっている。得てして、そのような依頼があるホテル旅館は残念ながら過剰債務を抱えている。あるいは、施設の老朽化が進んでいることが多い。そのため、外部スポンサー探索においてもスムーズな事業承継が困難な場面が多い。