コンシェルジュノート

2017/08/11 コンサルタントコラム

事業承継に向けた取り組み:第1回 執筆:昌子 弘明

今の日本は中小企業によって、雇用の7割が支えられています。また、雇用を通じて所得税や社会保険料など財政に大きく貢献しています。中小企業経営者の高齢化が進み、円滑な事業承継は喫緊の課題と言われています。

直近20年間で経営者のピーク年齢が47歳から66歳に上昇しています(出所:2016年度版中小企業白書)。また、5年以内に事業承継を行う必要がある中小企業は、60歳を超える経営者で5割以上、70歳を超える経営者で8割以上というのが現状のようです(出所:東京商工会議所「中小企業の経営課題に関するアンケート(2017年)」より)。

事業承継ができないことで廃業してしまう…ということがあれば、とても残念でなりません。しかし、実際にそのようなことが起きています。廃業企業の中に含まれる経常黒字企業の割合は50.5%と半数を超えているのです(出所:東京商工リサーチ「2016年休廃業・解散企業動向調査」より)。

事業承継では親族である子息や子女が会社を継ぐことが多いのですが、さまざまな理由によって継げない、継がないということが起こります。そのため、黒字企業であっても廃業せざるを得ない場合があるのです。近年、日本企業でも従業員や外部人材の活用により事業承継を果たすケースや、企業の合併や買収といったいわゆるM&Aによって事業承継を実現するケースが増えており、選択肢として認識されはじめています。外部人材の活用やM&Aと聞くと大企業の話と思われがちですが実際は異なります。国は中小・小規模企業の円滑な事業承継を
促進することを目的に平成23年10月から東京都事業承継引継ぎ支援センターを設置しています。設置された当初(平成24年度)の新規相談件数は338件、M&A等の成約件数は5件でしたが、平成28年度の新規相談件数は679件と約2倍、成約件数は41件と約8倍に増えています。

中小企業の事業承継を円滑に行うためのプラットフォームは整備されつつあるのが実際です。次回以降では、「親族内の事業承継」「親族外の事業承継」の視点から円滑に事業承継するための取り組みや、それぞれのメリット・デメリットなどをお話しいたします。