コンシェルジュノート

2015/08/11 再建屋 道元

第六十四話『切通支配人の解雇』

 上田総支配人は、今日も女将に呼び出されていた。それも仕事のことではなく、切通支配人のことで日々呼び出されることに正直うんざりし始めていた。

「切通支配人にはきちんと伝えてくれた。もう現場を乱さないで、って。」
「ええ、何度も切通には話しているのですが・・・。」

 上田は歯切れの悪い言葉でうやむやにしようとした。そしてそれ以降、女将に何かを話すこともなかった。

「そう。じゃあいいわ。私からもう一度話してみるわ。前にも注意したのだけど、何も変わらなかったから。上田総支配人の言うことなら聞いてくれると思ったのだけど。だめのようね。」

「女将の言うことはよく分かりません。ただ私は、これまで硬直的で他部門の人間のやることに興味のなかったスタッフ同士の理解を深めようとしているだけです。そのために、毎日各部門のスタッフを集めて簡単なブリーフィングを行っているんです。これは、経営改善委員会で決まったことですし。別に私一人が勝手にやっていることではないんです。」

「そのおかげで、現場が混乱していることが分からないの。仲居がフロントのチェックアウトを手伝ったり、配膳係の手伝いをして調理場まで料理を取りに行ったり・・・。そのせいでどれだけ仲居に負担が増えているのか分かっているの。仲居頭からもこんなことは止めてほしいと強く言われているの。旅館にとって一番大切なのは、仲居よ。仲居がしっかり仕事ができないと、お宿の評判は決して良くならないの。それぐらい分かるでしょう。」

 時々見せる口元が微妙につり上がる癖が、いつもより気になった。

「最近のじゃらんの評価を見てください。以前は4.0だった評価が、今は4.4まで上がっています。これは、ひとえに現場のスタッフ同士が助け合いながらお客様をおもてなしするという姿勢が以前より前に出ているということではないでしょうか。」

「そんなことを言ってるんじゃないの。あなたは、誰のおかげでこのお宿に勤められていると思っているの。私はオーナーよ。あなたなんかいつでも首切れるんだから。前にも言ったことをできないのならば、支配人として失格よ。」

 一気にまくし立てた女将は、きっと切通支配人を見据えてから、そそくさと立ち去っていった。

 それから数日たった頃、切通支配人は朝倉社長に呼ばれて解雇を告げられた。理由は、支配人として不適格だということだけだった。淡々と告げられた。