コンシェルジュノート

2015/02/12 コンサルタントコラム

採用の原則と留意点
《コンシェルジュコラム》旅館・ホテルの人材採用 (2) (執筆: 遠藤 光輔)

前回のコラムは、旅館・ホテルの採用動向について述べてきた。
前回のポイントとしては、人材採用は困難になってきているということと、それに対して具体的な取り組みを行えている企業が少ないということである。

今回は、どのような点に留意しながら取り組みをしていくのかを考えていきたい。

■ 採用活動のプロセス

採用活動は、大きく分けて以下のようなプロセスである。

  1. 採用告知
  2. 選考
  3. 入社

中途採用や新卒採用など採用形態で多少の違いがあれ、大まかな流れは変わらない。順にみていく。

1. 採用告知
まず、企業が求人を行っている、つまり人を探しているという点を伝えることがスタートである。職業安定所(ハローワーク)に求人票を掲載することや、地域の折込広告、有料の求人誌・求人サイトなど、各種求人媒体へ掲載して伝えていくことである。
場合によっては、知人・取引先などへ伝えていくことや、人材紹介会社へ依頼する場合もある。

2. 選考
これらの情報を元に、応募がある。
履歴書を提出すること(新卒採用ではエントリーシートなど)で、書類選考を実施し、その後面接の過程へ進む。「この人物は採用してもいいかどうか」といった見極めの過程である。

3. 入社
これらの選考過程を経て、仕事を探している人(求職者)との条件が合致した場合に晴れて採用が決定する

これらをスムーズに進めるために、「求める人物像を明確にする」ことや「一定の母集団を形成する(=応募数を増やす)ことが重要であると一般的には言われている。

■ 求職者のプロセス

ここで、一旦考えてほしいのだが、採用活動の目的は何であろうか。採用活動は、企業と従業員となる関係(雇用契約)を締結するための活動であることを忘れてはならない。つまり、採用活動は、人材を採用したいという企業と仕事をしたいという求職者の雇用契約を行うための活動であり、自社が採用活動に対して具体的に何を行うかを検討する際に、求職者の採用プロセスも考慮する必要がある。すなわち、採用活動は主役が求人(企業)
と求職者(従業員)の2面から検討する。

求職者の採用のプロセスは以下の通りである。

  1. 求人を見つける
  2. 求人に興味をもち応募する
  3. 選考を経て、入社の意思を固める
  4. 入社する

1. 求人を見つける
ハローワークの求人票や、その他求人媒体などの求人情報にアクセスし、当社の求人情報にアクセスする。そもそも求人を見つけられないと応募してくることは困難である。求職者からみて、求人情報が届いているかどうかという点が改善のチェックポイントとなる。

2. 求人に興味をもち応募する
求人を見つけるだけでは、応募はされない。求職者が興味をもち応募したいと思うことで初めて応募される。求職者がどのような条件・求人内容に興味をもつかを検討する。例えば、求職者の応募条件が、給与などの金銭面なのか・就業時間などの職場環境なのか・どのような仕事をするという内容の面なのかなどを想定し、興味を持ってもらえるようにあらかじめ想定しておく。

3. 選考を経て、入社の意思を固める
選考の段階でも同じである。企業がこの人物を採用してもいいかどうかを検討しているのと同時に、求職者もこの会社へ入社してもいかどうかをじっくりと判断している。多くの場合、仕事に就くことは、1日の時間の大半を費やすこととなるためである。

4. 入社する
これらのすべての条件がそろって初めて入社に至る。

■ 採用は選ぶと同時に選ばれている

採用の競合はどこかを考えたことはあるだろうか。企業が複数名平行に選考を進めていると同様に、求職者も複数企業を応募している場合が多い。つまり、多くの求人の中で、自社の求人が選ばれるような仕組みが必要となってくるのである。
特に、求人求職市場が売り手市場になっている場合、つまり求人の数が多くなっている局面では、その傾向が強くなる。

企業の求人においては選ばれるように情報を発信できているだろうか。また、その発信している情報は求職者が欲している情報であるだろうか。2者間のマッチングが採用の原則である。この辺りの情報を整理して、求職者が求人に興味をもち入社したいと思えるような求人内容・会社になる必要がある。

「このホテル・旅館に宿泊したい」とお客様に選ばれるように、採用の場面でも同じように選ばれているということである。自社の魅力(他の求人と比べて)や求職者の考えている条件などを一度社内にて議論すると改善策が見えてくる。

次回は、「今後の旅館・ホテルの人材採用」として、今後考えられる採用について探っていきたい。