コンシェルジュノート

2010/12/07 コンサルタントコラム

ホテル・旅館業界が他業種から得られるものとは1-②

ライアンエアーは、アイルランドに本社を置く欧州最大のLCCである。搭乗者数では世界で5番目の規模を誇り6,528万人にものぼる。同じくLCCである米国のサウスウェスト航空が10,134万人であり世界最大であるが、全日本航空4,192万人、日本航空4,183万人よりも遙かに規模が大きい航空会社である。(搭乗者数は、いずれも20091月~12月)この大躍進の主な要因は、CEOであるオリーリー氏の次の言葉に集約される。

「競合他社を排除するために、運賃とコストを下げ続ける。長期的な目標は運賃ゼロ」

例えば1ヶ月ほど先の搭乗券であれば、欧州各都市を結ぶ路線で片道5ユーロ(約565円)であり、年間平均運賃は約35ユーロ(約4,000円)であり、同じLCCのイージージェットと比べて3割以上安く、サウスウェスト航空の半額以下となっている。

一方で、ライアンエアーは世界でももっとも収益性が高い航空会社の一つでもある。税引き前利益率は29%と、10%程度のサウスウェストやルフトハンザなどに比べて突出して高い。(日経ビジネス1122日号より)

運賃を徹底的に安くしながら、高収益を維持する。このからくりは何であろうか。日経ビジネスの記事によると下記のようなものがある。

1. 個別課金

コストを分解して個別に課金する料金システムを採用していること。通常運賃に含まれる空港税、チェックイン料(ウェブサイトにより事前チェックインすると無料)、搭乗券は自分で印刷して持参、手荷物チェックイン、荷物の重さによって課金などであり、運行の効率性を上げるために顧客の協力をうまく引き出す仕掛けを行っている。

2. 徹底したレベニューマネジメント

事前の予約については最安の運賃で販売しているものの、12日前には18倍もの運賃で販売するなど、競合他社に比べて販売初期の金額を下げて直前の販売価格を引き上げている。恐らくは他社よりも、レベニューマネジメントを駆使しているようである。

3. 駐機時間25

 駐機時間が25分という圧倒的な短さが航空機の稼働率を飛躍的に高めているのである。このために、座席指定がない、座席にリクライニング機能がない、またポケットもなく清掃が簡素化される、機内食も必要のある人しか配られないなどの工夫がなされている。

4. 契約社員の活用

 客室乗務員の給与の39%は、機内食販売の売上や乗務時間など個人の生産性に基づいて支払われている。操縦士も飛行時間に応じて支払われる報酬は、給与の37%を占める。また、操縦士も乗務員も半数以上が契約社員である。

つづく