コンシェルジュノート

2010/09/14 コンサルタントコラム

所有と経営、運営の分離は、再生と承継に効果あり⑤

企業再生の場合、所有・経営・運営を分離することにより債権者にも納得が得られやすい、そして再生計画の実現率の高い再生スキームをつくりあげることが可能となるのである。

 

所有直営方式のホテルがあり、バブル時代に過大な投資を行ったためその債務が重くのしかかっている場合を考えてみる。このような事例の場合、バブル時代に増築、改装した施設コンセプトが既に現代にはそぐわないものになっていることが多い。当時は、法人需要も旺盛で宴会一件当たりの人数も多く、大箱の施設が多いようである。また客室も増築を重ねて、客室数だけが多くまた団体が泊まれるように和室が多い。このように、団体から個人へ、よりわがままになっている消費者の要望、宿泊体験(海外も含めて)が豊富で厳しくなっている選択および評価基準など消費者の価値観の多様化に応えられる施設ではもうなくなっているのである。更に、一番の問題は、旧態依然としたマネジメントと硬直したサービスだ。施設が消費者のニーズに適合していないため資産効率が低下するとともに、昔ながらの疑いもなく提供している決まり切ったサービスのために、顧客満足度が低下しており結果的に宿泊者数および利用者数が低下している。これらの要因によりホテルのキャッシュフローをじわりじわりと低下させており、過大な債務を返済する能力が失われつつある。それでも、最低限の修繕は実行せざるを得ずまた借入を行う。銀行も実態は分かっているにもかかわらず、減価償却や棚卸資産を調整する事すら行って何とか黒字にすることにより、債務者ランクを下方遷移せずに貸し出しを行っている状況である。これでは遅かれ早かれ行き詰まることは容易に予想されるだろう。

この様な状況にあるホテル再生の一つの手法として、所有・経営・運営の分離がある。

まず、この過大な債務をどうするかである。恐らく実質債務超過であり、35年で解消し債務償還年数も10年~15年以内に抑えられるキャッシュフローが出てこない状況だと考えられる。リスケしても難しい状況だと考えられる。そうなると、債務者に債権放棄をお願いしなければならなくなる。第二会社方式やDPO(ディスカウンティッドペイオフ)を活用する方法もあるが、所有・経営・運営を分離するとどうなるか見てみよう。

 つづく