コンシェルジュノート

2011/11/22 再建屋 道元

第十七話「朝礼」

 「本日のお客様のご予定です。宿泊者が125名、そのうち、○TBさんの募集団体が2つ、○NTさんの募集団体が1つとなっています。団体様以外では、○天さんと○らんさんからのコマ客が23名様です。この前、○らんさんご利用のお客様から評点3という厳しい口コミを頂いています。コメントのポイントは、仲居が料理を運んでくるのが遅いというものでした。原因を調査したところ、仲居と板場の連絡が悪かったということです。仲居頭と板長はよくコミュニケーションをとってください。」
 チェックアウトの時間は、帰りのお客様でロビーは賑やかだ。女将は、できるだけお見送りに顔を出している。昨晩少し粗相があったお客様には、余計に時間をかけてご挨拶をするようにしている。旅館の接客は、「お出迎え3歩、お見送り7歩」と言われるように、お見送りの際にどれだけお客様と接することができるか、またおいで頂きたいというこちらの気持ちをさりげなく伝えられるか、そしていかに気分良くお帰り頂くか、まさしく気を抜く暇はない時間帯なのである。
朝礼はいつも、張り詰めた雰囲気の中行われている。チェックアウトが落ち着いた頃を見計らって、10:00過ぎに行われるのが常であった。ばたばたしていた時間帯を過ぎて、少しはホッとしようという雰囲気が従業員にも押し寄せてくる時間帯である。だからこそ、女将は朝礼の時間を大切にしていた。毎日来られるお客様がいて、はじめて旅館は商売になる。この当たり前のことを従業員にも浸透させたかったからであった。
「朝礼はいつもあのような形で進められているのですか。」
調理の終わったロビーで女将と道元は淹れ立てのコーヒーを飲んでいた。
「ええ、そうです。何かだめな点でもありましたでしょうか。何かお気づきの点があれば、何でも結構ですので教えて頂けますか。思ったことは口のするのが私のポリシーですから、逆に人の話もよく聞くよう戒めているのです。遠慮なく何でもおっしゃってください。」
着物の襟を手で軽く直しながら女将は道元に向き合った。
「いえ、何がだめだとか、何か気づいた点などは無いんですよ。ただ、きりっとされているな、と感心していただけです。」
「そうですか、ありがとうございます。朝礼はきちんとやろうと頑張ってきましたので、嬉しいですわ。」
 女将は少し怪訝そうな顔をしながらも、笑顔で答えた。
   つづく